グリーンブレイク係数とカットの大きさについて

チーズはその種別ごとに水分含有量が異なります。それぞれのチーズの水分含有量の調整は凝乳ゲルの硬さ、カードカットの大きさ、カット後の攪拌と温度上昇により行なわれ、最終の水分量は型詰時の粒径や粒の状態で判断することができるようです。
カット後の攪拌と温度上昇による水分調整については容易に行えますが、カードカットの大きさについては、チーズの種別に応じてカードカッターを複数持つ必要があり、自家製でチーズを作っている身では難しいものがあります。
そこで水分調整についてグリーンブレイク法とカットの大きさがどのような役割と関係があるのかとチーズ毎の型詰時の粒径などについて調べてみることにしました。
まずチーズの水分を調整するにはグリーンブレイク法で係数を変える方法とカードカットの大きさを変える二つがあり、この二つを併用した場合の効果について調べてみました。
結論から言うとグリーンブレイク係数とカードサイズは同じ水分調整でも作用する時間軸とメカニズムが違うため、併用すると単純加算ではなく相乗的に効くようです。

それぞれの役割の本質
カードサイズ(カットサイズ)は排水を表面積で支配することで
・小さいと表面積が増え、 ホエー排出が多くなりカードは乾きます。
・大きいと表面積少なくなり、ホエーが保持され水分が多くなります。
これは主にカット後における攪拌中の排水速度を支配します。
グリーンブレイク係数(カットタイミング)
これはゲル強度と保持される水分の初期構造を支配するもので
・若い(係数低い)とゲルが弱く、カット時に崩れやすく、脂肪・水分が流出しやすく結果的に乾く傾向となります。
・遅い(係数高い)とゲルが強く、カットしても崩れにくく、水分が保持されしっとりとした質感になります。
これは主にカット時の内部構造とその後の排水の耐性を支配します。

この二つを併用したときの挙動
同方向に振る場合(乾かす) 早いグリーンブレイク × 小さくカットでは結果として崩れやすいカードができ、表面積も大きくなることから排水が爆発的に進み過乾燥のリスクが生ずる。特に現れる現象としてはfines(微粒子)増加、脂肪ロス増加、 組織が脆くなることです。
同方向に振る場合(水分多く)遅いグリーンブレイク × 大きくカット では結果として強いゲルができ、表面積が小なく排水が遅くなることから、かなり高水分で閉じた組織ができる。結果として、酸の入りが遅く(内部拡散遅延)なり、熟成のムラが発生しベタつきや熟成の遅延が発生する。
逆方向に振る(ここが設計のキモ)遅いグリーンブレイク × 小さくカット では結果としてゲルは強く(崩れない)て表面積が大きいことから締まっているが適度に水分が抜けることからセミハード~ハードに多く用いられている( コンテ、 グリュイエール)。
逆方向に振る(ここが設計のキモ)早いグリーンブレイク × 大きくカット では結果としてゲルは弱く(排水しやすい)、表面積が小さいことから柔らかいがダレない構造となる(ウォッシュ系、タレッジョ系)。

これらの関係を数式的に見ると水分はざっくりこうみることができる。
最終水分 ≈ f(ゲル強度 × 表面積 × 攪拌時間 × 温度)
ここでグリーンブレイクはゲル強度に作用し、カットサイズは表面積に作用する。
つまり、異なる変数を同時に動かすことは最終水分に非線形な効果をうみ、水分の制御がしづらくなるようです。

実務的な水分の設計
調整順序としてグリーンブレイク係数を固定(例:0.6~0.7)し、カットサイズで狙いの水分へ寄せて、微調整は攪拌時間・温度で行い、最終粒径に収束させる方法が良いようです。

チーズタイプ別の典型組み合わせ
タイプ     | グリーンブレイク  | カット     | 型詰時の粒径

モッツァレラ | やや早い(2.5倍) | 中~大 (1.5~2.0cm)|   ー
ストリング | 標準(3倍) | 中 (1.3~1.5cm) |     ー  
ゴーダ、ラクレット | 標準(2.5~3.5倍) | 中(1.0~1.5cm) | (0.6~1.0cm)
コンテ 、パルミジャーノ | やや早い(2 ~2.5倍) | 小 (0.5~0.8cm) | (0.3~0.6cm)
タレッジョ | 早い(2倍) | 大(2.0~3.0cm) | (1.0~2.0cm)
カマンベール | 遅い(5倍) | 特大 | 特大

カットの大中小
小 :0.5~0.8 cm ( 米粒~トウモロコシ粒くらい )
中 :1.0~1.5 cm ( サイコロサイズ )
大 :2.0~3.0 cm
特大 : 3cm以上の不定形( お玉の半分以上 )

型詰め時の実効粒径
・ハード :3~6 mm
・セミハード:6~10 mm
・セミソフト:10~20 mm
型詰は粒が半分結着している状態で入れること

粒径サイズが重要な理由
・粒径は内部水分分布を決めており、小さいと均一に乾く、大きいと中心に水分が残りこれがそのまま熟成の進み方やテクスチャの差となる。
・粒径は結着構造を決めており、 小粒では均一な緻密構造となり、大粒では不均一でクリーミーとなる。つまりチーズの口溶は粒径で決まる
・粒径は酸の入り方を決め、小粒だと酸が均一に拡散し、大粒だと外側だけ酸性化して中は遅れる。ウォッシュ系で重要

粒径分布が重要
理想の粒径分布は均一サイズではなく、ややばらつきがある方が良い、その理由は小粒だと排水促進で、大粒では 水分を保持することから内部構造が安定する。

型詰め時の理想状態
良い状態(理想)
粒の輪郭が「うっすら残る」が、軽く押すと結着する。状態としては半分バラけて、半分くっつく
乾きすぎ
完全にバラバラで粉っぽい状態。問題としては結着不良やひび割れが発生する。
水分多すぎ
ドロっとしていて粒が見えない。 問題としてはベタつきやガス・異常発酵する。

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