凝乳酵素の使用量や固まった凝乳をカットするタイミングについて

チーズを作るためのレシピにミルクを固めるための凝乳酵素(以下レンネットと表記)として単一強度レンネット(シングルストレングスレンネット)と書かれていることがありますが、専門的な用語でどのようなものか分からないということを聞くことがあります。そこでこの用語やレンネットの使用量、固まった凝乳をカットタイミングについて簡単に説明します。

レンネットの必要量
単一強度レンネット(シングルストレングスレンネット)とは、pH6.5で温度30~32°Cのミルク1,000kgを30~40分間で固めるのに200mlで足りるレンネットの力価と考えられています。国際規格ISO11815(2007)で定義された International Milk Clotting Unit (国際ミルク凝固単位 ( IMCU/ml or g : レンネットの力価))で言うと約250IMCU/mlとなります。
すなわち1kgのミルクを固めるのためには、50IMCU/mlの力価を持つレンネットが必要ということになります。このことから使用するレンネットのIMCU値とミルクの量が分かればレンネットの必要量を次の計算で求めることができます。

ミルク量 ( kg ) × 50IMCU/ml ÷ 使用するレンネットの力価 ( IMCU/ml ) = 必要量 ( ml )


カッティングのタイミングを決める方法
ミルクにレンネットを加えた後、固まるまで待ち、適切なタイミングでカットする必要があります。その方法には、以下の3つがあります。

1. 固定時間法
レシピに指定された時間を待つ方法ですが、ミルクの種類や酵素の強さなどが影響するため、正確ではなく推奨されません。


2. クリーンブレーク法
15~20分待ってからカードをカットする方法です。適切なタイミングは、カット時の割れ方やホエーの透明度で判断します。経験が必要になります。


3. 凝集点法(最も正確な方法)

凝乳が形成されるタイミング(TP)を測定し、チーズの種類ごとの係数を掛けてカット時間(TD)を算出する方法で、チーズの品質を安定させるために最も正確な方法です。



・凝集点法の手順
 ・レンネットを加え、タイマーを開始する。
 ・7~8分後、ペットボトルのキャップなどをミルク
の表面に置き、回転するか確認する。
 ・9~10分後にわずかな抵抗が出るので、30秒ごとに
キャップを回してチェック。
 ・10~14分の間にキャップが動かなくなったら、これが凝集点(TP)。
 ・TPに係数を掛け、カット時間(TD)を計算する。

   例:
    TP=10分、係数=4の場合
    TD=4×10=40分
    9:00にレンネットを加えた場合、9:40にカット可能


係数はチーズの水分含有量に影響し、チーズの種類によって異なります。また、適切な凝集点法を用いるには、TPが10~17分になるようにレンネット量を調整する必要があります。範囲外の場合は、次回の製造時に調整してください。

チーズタイプ別の凝集係数
Swiss , Alpin types , Parmesan , Romano etc.   2
Gruyere                    2.5
Wensleydale , Manchego             3
Cheddar , Gouda , Hard British , Havarti etc.    3
Jack , Caerphilly                 3.5
Feta , Blue , Mozz , Halloumi , etc         4
Camembert , Brie , Stilton , etc          5

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